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ロータスカルテット ベートーベン弦楽四重奏曲全曲演奏

ロータスカルテット ベートーベン弦楽四重奏曲全曲演奏   横浜市鶴見区民文化センター「サルビアホール」

 2017年6月14日 ベートーベン弦楽四重奏曲第15番、第14番

 ロータスカルテットを初めて聴いたのは、5年ほど前になるだろうか、ブラームスの弦楽四重奏曲が演目のときだったと記憶している。ブラームスの弦楽四重奏曲はなぜか東京ではあまり演奏されないのでこれは好機と思い出かけたのであったが、曲もよかったのだろうがカルテット自体のすばらしさに感心し、それ以来この団体の「来日」を心待ちにするようになった。その後しばらくこの団体を聴く機会に出会わなかったが、昨年今年と続けて「来日」があり聴く機会を得た。今回はベートーベン弦楽四重奏曲のなかでも極めてユニークであり最高傑作として評価の高い二曲が演奏されるので、これを逃すわけにはいかない。

 ロータスカルテットは、第2バイオリンのみ外国人の男性の、日本人女性を中心としたドイツで活動している団体である。メンバーは創設以来何人かは入れ替わりがあるらしい。
 団体としてどこで結成されたのかは知らないが、ドイツで活動するようになったのは、日本では常設のカルテットが活動を続けていくことは極めて困難であるといわれているからであろう。ただ日本人が本場欧州を活動の舞台とすることは相当の努力と研鑽が必要だったにちがいない。実際彼女らの演奏スタイルは日本のカルテットと本質的に異なり、高名なるドイツのメロスカルテットの流れを汲む重厚な音色が特徴的である。息を合わせてハーモニーをつくり出していく、喩えるなら糸を撚り合わせて布を織っていくような日本のカルテットと違い、塑像を作り上げていくように各奏者が練り上げた音を原型に貼り付けていく感覚かと思う。だから彼女らの演奏にはしばしば音による固体的な造形物を感じさせ音の像を現出させる。時々、音像を生成していくというより、音楽は既に存在していて、その音像を描写しているかのような錯覚を覚えることもあった。それは彼女らの演奏がシンフォニックの要素があるということかと思う。
 第一ヴァイオリンはカルテットをリードしていく存在であるが、彼女の音は極めて強靭かつしなやかで高貴さの滋味に溢れている。第二ヴァイオリンは先に述べた音像の原型を作っていくのだが、すばらしく個性的で多彩な音色を当意即妙に提出してくるので、他の奏者とのより高度なコラボレーションを可能にしている。ヴィオラはどちらかというと縁の下の力持ちに徹しているように思われるが、なんとも滋味に溢れた隠し味を溶け込ませていく。そしてチェロ奏者は特筆すべき存在で、インスピレーションに溢れた思い切りのよい当意即妙さで彼女らのセッションに絶妙な表情付けを施していく。これほど変幻自在な表現をアクティブに機動的に行うカルテットのチェロ奏者を自分は知らない。

 一曲目は第15番作品132。ドラマチックで深い精神性を湛えた曲であり自分が好きな曲である。ロータスカルテットは持ち味のドイツ的な重厚で骨太な表現でこの曲を弾き進める。まさにあの不屈の闘志の持ち主ベートーベンにふさわしい気魄みなぎる演奏である。叙情的な場面でもセンチメンタルな抒情ではなく、まさしくこの曲が音楽による神への感謝の捧げ物に他ならないことを示した。

 二曲目の第14番作品131はベートーベンの弦楽四重奏曲の中でも最高傑作といわれる。演奏は前曲につづきドイツ的重厚さのきわまるもので、第一楽章などはあたかもショスタコーヴィチのシンフォニーさながらの重厚さと深刻さを湛えている。特に第二ヴァイオリンの音色が、ときにヴィオラとみまごうばかりの深みと滋味を見せるのが印象的だった。とはいうものの、前曲よりは曲の性質上全般的に表情が豊かである。

 自分はこれが本場ドイツのカルテットなのだと感心する一方、この時期のベートーベンの「軽み」や抒情の繊細さの表現に長けた日本のカルテットの良さがかえって身にしみて懐かしく思われたのも事実であった。
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